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平成27年度学位記授与式 学長式辞(要約)

今年の天気はいたずらっ子のようでした。2月にツツジの花を咲かせてみたり、3月には冬のような寒さがつづいてみたり、春と冬の鬼ごっこに、最後までふりまわされてしまいました。でも、こどものことなので、大目にみることにいたしましょう。


本日、こども教育宝仙大学は、ここに第4回目の卒業生をめでたく社会に送り出すことになりました。

卒業生のみなさん。ご卒業お目出とうございます。
わたくしが本学に着任したのはいまから3年前のことでした。みなさんが2年生になったばかりのときになります。前学長の池田先生とはちがって、なにしろ保育の世界ははじめてのことでしたので、なにもかも珍しく、新鮮でした。とりわけ最初の夏休みに、みなさんと富山県の山奥にある利賀村でいっしょに数日間すごしたことは、貴重な体験となりました。保育者をめざす学生って、どんな若者たちなのか、いろいろ、おもしろい発見がありました。


最初のカルチャーショックは、幼稚園の先生についての見方が変わってしまったことです。幼稚園時代にあこがれたピアノが上手なあのやさしい先生が、じつは体育会系だったかもしれないという疑念が芽生えてしまったのです。体育会系というとすこしニュアンスがちがうかもしれませんが、スポーツの好きなアクティヴな人という意味です。

みなさんは、合宿中も寸暇を惜しんでバスケットやバレーボールに興じていました。やさしそうな女子学生も、運動神経に恵まれていて、身体をうごかすことが本当に好きなんだなあと感心いたしました。なかには男子学生にまじって、バスケットボールを奪い合っている人もいました。そのスピードと迫力に思わず後退りしてしまったほどです。


そしてなによりも印象的だったのは、「宝仙こども広場」の準備をしているときのことでした。「宝仙こども広場」というのは、班ごとにそれぞれ出し物を競い、学生と地元のこどもたちが歌と踊りを披露し、村中の人が集まって交歓するという催し物です。いわば利賀村課外授業の総仕上げというべきものです。

その飾りつけをしているときに、やってきたこどもたちの声が聞こえました。すると、それこそみんな一斉に声のするほうに顔をむけて、にこやかな表情になったのです。ちょっとびっくりしました。こどもの声に、身体が反応しているのです。プロをめざす人たちはちがう。たんにこどもが好きなだけでなく、自動的に身体が動いてしまう、そこがすごい。これがプロなんだと、あらためて思った次第です。


みなさんは、あのとき、まだよちよち歩きの幼児もいっしょになって身体を動かしていたのを覚えているでしょうか。歌にあわせて手をあげたり、前につきだしたりするのですが、すぐに腰砕けになったり、よろけて転んでいました。おもわず手をさしのべようとしたほどですが、転んでも、また手をついてたちあがり、身体をゆすっていました。それをみていて、たった2本の足で立たなければならない人間は、なんて不安定で、倒れやすくできているのだろうと思いました。


でも倒れても、また手をついてたちあがろうとしています。人間は、こうしたことをあきずにくりかえしていくうちに、多少、凹凸のあるところでも立っていられるようになるのでしょう。ということは、人間が立っていられるのは、足がセメントでしっかり固定されているからではないのです。その逆です。不安定で倒れやすいからこそ、立っていられるのです。

なんという逆説でしょう。人間は不安定で、固定されていないから、立っていられるのです。そのためには、バランスをとることを覚えなければなりません。試行錯誤をくりかえし、実践と経験をつむなかでそれを身につけていくのです。


わたくしたちは、ついつい完全であることを求めてしまいます。完璧さを追求するあまり、自分に自信がもてず、不安になったりします。これから社会にでてうまくやっていけるだろうかなどと悩んでしまいます。

しかし、卒業時に完成していて、完全だったら、いってみれば2本の足がしっかりセメントで固定されていたのなら、卒業後のまったくあたらしい状況にはうまく適応できないかもしれません。倒れやすく、不安定であるからこそ、あたらしい環境のもとでも、試行錯誤をくりかえし、修正していくことができるのです。

経験を積み、実践をかさねることで、知識を、智慧に変えていくのです。これこそ本学の創立者がかかげた建学の精神にほかなりません。困ったときには、この建学の精神を思いだしてください。きっと道が開けることでしょう。


21世紀の未来は、みなさんにかかっています。みなさんが本学に入学したときの夢をもういちど思いだしてください。社会に出ても、初心を忘れることなく、みなさんが夢をぜひ実現させてくれるよう願っております。


平成28年3月19日
こども教育宝仙大学長 山本 秀行

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