昨年の熱狂は収まったとはいえ、昨今、生成 AI をはじめとする、AI(人工知能)技術が急速に発 展している状況を、度々、ニュースで目にすると思います。また 2024 年ノーベル物理学賞に「人工 ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的発見と発明」で、米プリンストン大学の ホップフィールド名誉教授、トロント大学のヒントン名誉教授の 2 名が選出され、化学賞では「コンピ ューターを用いたタンパク質の設計」でワシントン大学のベイカー教授、「コンピューターを用いたタ ンパク質の構造予測」で Google DeepMind のハサビス氏とジャスパー氏が選出され、機械学習を はじめとする AI が学術・研究分野だけでなく、人類に及ぼすインパクト大きいことが改めて確認さ れました。
このように、AI は、様々な分野で情報システムに組み込まれ、我々の仕事の効率化を進め、改 善していくことが期待されます。本学の卒業生からも、保育園の ICT 化により支援システムが様々 な計画において、候補を挙げてくれるので効率的に仕事を進めることが出来るとの声を聞きます。
AI は基本的に、学習データに基づいて高度な処理が可能ですが、それに携わる専門家の設計 と判断の上に成り立つものですから、適切に構築された場合、その専門家の知見による結果を活 用することができます。しかし、そのまま結果を鵜呑みにしないで、利用する人間の視点で検証が 欠かせません。
特にソフトウエア開発においては、AI の生成したものの検証が行いやすいため、生産性を向上 できることが謳われています。このような成果物が明確で、結果をすぐに検証できるものに対して、 活用は急速に進んでいくと考えられます。
しかし、AI の浸透により、人間が AI の提示したものを承認することを続けることで、エコーチェン バー現象に晒された者の様に思考の多様性を失い、AI の提示に頼るように変化することが危惧さ れます。また「タイパ」「コスパ」「ウエルパ」といった言葉が示すように仕事だけではなく、日常生活 にも指標を意識する考え方が入りつつあります。
そのような中で、おとなは自らがこどもを見る視点が大きく変わっていくことを意識する必要があり ます。こどもが AI とどう関わるかということと同じぐらい、こどもが遊びなどの体験を通して学んでいく 過程を、おとなが、パフォーマンスで判断するのを抑え AI の回答に依らずに見守る視野の広さが、 これまで以上に重要になるでしょう。
遊びはこどもの自発性による対象の探求を通した能力開発と考えるならば、こどもを取り巻く状 況(環境)は重要です。遊びのような自発的探求によって身につけたものが個性や創造性の基盤で あると考えると、おとながその環境をどういう考えで整えているか、これまで以上に自身を振り返る必 要があります。
本学の授業では「あふれる情報と多様化した社会の中で、変化に即した判断ができる」ような、 実践的なカリキュラムと共に、ICT 活用を授業の中に取り入れています。